現場思考力ゼミ ―中学入試を使って現場思考力を培う―

現場思考力とは、与えられた条件や自分の持っている常識、知識を組み合わせて、何らかの推論や結論を出す力のことをいいます。中学受験の社会入試問題を使って、現場思考力の養成をはかることを目的に、2014年に双方向性を持ったブログとして運営していました。生徒の答案を添削して公開するという取り組みでした。このブログではその問題と解説の一部を保存しています。

15成蹊H24 解答解説(中学入試で培う現場思考力)

精神病患者数と戦争の関連性を問う骨太な問題

兵士に与えた影響の原因が、[資料2]で具体的に示されています。平常時には年に20日あった休暇(それも相当少ないと思いますが…)が、戦時には1日もないのです。戦争をしているのですから、兵士たちは当然肉体的にも精神的にも疲弊しているはずです。

考えてもみてください。皆さんがもし、1日の休みもなく勉強し続けなければならないとしたらどうでしょうか? どれだけやっても1日の休みすらない、しかもその苦行がいつ終わるかもわからない、そう思っただけでも目の前が暗くなりませんか?

 

ましてや、戦場で戦い続けるということは、自分の命が危険にさらされる上に、人の死を目の当たりにしたり、さらには自分が人を殺す立場になったりするということです。また、軍隊では厳しい規律や上下関係で締め付けられることも多かったようです。映画やドラマでそのようなシーンを見たことのある人もいると思います。

 

そういう過酷な状況で兵士たちが抱える肉体的・精神的なストレスは想像を絶するものであったと考えられます。結果として、精神病を患う兵士が増えていったのです。

 

[資料3]では、戦争が進むにつれて精神病患者の割合がどんどん増えていったことが読み取れますね。特に、太平洋戦争が始まった1941年からは一年ごとにほぼ2倍ずつに増えていっています。戦争が激しくなった分、それだけ兵士にかかるストレスが深刻なものになっていったということでしょう。

 

そしてもう一つ気づいてほしいのは、「戦病患者数」の移り変わりと年号の関係です。太平洋戦争は最初こそ日本軍が勝っていたものの、1942年6月のミッドウェー海戦で敗れてからは敗退が続いたことはみなさん知っていると思います。

にもかかわらず、1941年以降の戦病者の数がそれまでに比べて少ないですね。戦争が激しくなって戦死者が増えたとも考えられますが、この数字からは、兵士たちが戦場で病気にかかっても日本には送り返されることなく、そのまま戦場にとどまっていたと考えることができます。 

 

データとして示された数字と自分の知っている知識とを照らし合わせて、「太平洋戦争が始まっているのになぜ戦病者数が減ったのか?」という疑問を持つことが求められる問題でした。

 

 解答

 

兵士は休暇を取れず心身に大きなストレスを抱えていたため、太平洋戦争が始まり戦況が悪化していくにつれて精神病を患う兵士が大幅に増えた。また、戦地で病気にかかっても日本に送り返される兵士が少なくなった。(99字)