現場思考力ゼミ ―中学入試を使って現場思考力を培う―

現場思考力とは、与えられた条件や自分の持っている常識、知識を組み合わせて、何らかの推論や結論を出す力のことをいいます。中学受験の社会入試問題を使って、現場思考力の養成をはかることを目的に、2014年に双方向性を持ったブログとして運営していました。生徒の答案を添削して公開するという取り組みでした。このブログではその問題と解説の一部を保存しています。

13渋谷教育学園幕張H22 解答解説

「きれいな夕焼けだと次の日は晴れやすい」のはなぜ?

 

 昔からの言い伝えというのは、どこかで耳にしたことがあるでしょう。どうしてそうなるのかということが科学的に実証されていなくても、経験則から気づいた知恵を代々言い伝えてきたのです。それによって不測の事態に備えたり、明日以降のことを予測して対応していたのだと思います。

 

たとえば、「宵越しの茶は飲むな」という言い伝えがありますが、まさかタンニンが酸化して…なんてことを知っていた人が言い始めたわけではないでしょう。おそらく、急須に入れたままにしていた茶葉で翌日お茶を飲んだら胃が痛くなった人がいた、その話は自分も聞いたことがある、と伝わっていったのだと思います。

 

 「雷なったらへそ隠せ」というのは子どもでも知っているかもしれません。おへそを取られてしまう、というのは方便で、おそらくは気圧が変わったり寒くなったりすると風邪を引きやすいから、おなかを出して寝ることがないようにということで伝わっていったのだと思います。

 

 さて、今回の問題。

 まず、日本の上空には強い偏西風が吹いていて、風は西から東へと流れています。もちろん雲も西から東へと移動していくわけです。そして、太陽は東から昇って西に沈むので、きれいな夕焼けが見えるということは、西の方角に雲がないということになります。

 

 西に雲がないということは、しばらくの間、雨雲が来ることはないだろうということで、「きれいな夕焼けだと次の日は晴れやすい」のです。

 

 同じような言い伝えとして「朝焼けは雨」というものがあります。朝焼けが見えるということは東の方角が晴れているということです。天気が西から東へと移っていくのですから、東側がすでに晴れていれば、そろそろ西側から雨雲が来るのではないか、と思えるわけですね。

 昔の人は天気予報がない中でも、こうやって天気を予測していたのです。

 

 「朝の虹は雨」というのも同じような言い伝えです。朝、虹が見えるということは太陽と反対側の西側で雨が降っていたことになりますよね。西側で雨が降っているということは、これから雨雲が近づいてくるだろうということです。

 

 それにしても、昔からの言い伝えを中学受験の知識を結び付けて答えさせる良問でしたね。こういう問題が出されると、受験生もわくわくするでしょう。

 

解答

日本の上空には偏西風が吹いており、天気は西から東へと移りやすい。夕焼けが見えるということは太陽が沈む西の方角の雲が少ないということなので、しばらく雨雲が来ることは考えにくいから。