現場思考力ゼミ ―中学入試を使って現場思考力を培う―

現場思考力とは、与えられた条件や自分の持っている常識、知識を組み合わせて、何らかの推論や結論を出す力のことをいいます。中学受験の社会入試問題を使って、現場思考力の養成をはかることを目的に、2014年に双方向性を持ったブログとして運営していました。生徒の答案を添削して公開するという取り組みでした。このブログではその問題と解説の一部を保存しています。

12麻布H24 解答解説(中学入試で培う現場思考力)

 「お金」のように価値があると信じ込んでいるから成り立っていることがらとは?

 

 ヨーロッパの金融危機では、ユーロの価値が暴落しました。ギリシャがユーロから脱退するのではないか、そうなるとユーロの価値は著しく低くなってしまうのではないか。そう思った人がユーロを売ったという面もあったのです。

 

現在のお金のしくみが保たれているのは、人びとが価値があると信じ込んでいるからこそだと問題に書かれていますね。お金は単なる紙や価値が高いわけではない金属でできていますが、何かものを買うときに交換できると思っているから成り立っているのです。

 

 今回の問題は難しいですね。お金のように価値があるとみんなが信じているからこそ成り立っていることは、他にどんなものがあるのでしょう?お金のように、本来のそのもの自体(紙や金属)には価値があまりないのに、信用によって高く評価されているもの。

 

 たとえば、土地がその一つでしょう。バブル景気のとき、土地の値段がもっと上がるかもしれないと考えた人びとは、土地をどんどん買っていきました。そうすると値段が上がります。その繰り返しで、びっくりするほどの値段になってしまったのです。「もっと上がるはずだ」という人びとの思い込みがあったのです。ただ、バブル景気の人びとの思い込みにより成り立っていることが何かと聞かれると、不動産市場になるでしょうか。答えにくいかもしれません。

 

成り立っているものが不動産市場とすると、高級住宅街とされている土地に注目してもいいでしょう。本来のその土地の価値(住みやすさなど)以上に、イメージで地価が高くなっていると説明できますね。

 

 あるいは、土地全般に注目してはどうでしょうか。土地の値段がついているのは、その土地の価値が失われることがないという人びとの思い込みがあるからです。しかし場合によっては、その価値が著しく低くなってしまうかもしれないのです。たとえば地震や洪水。そういう天災によって土地の価値が低くなることもあるでしょう。家やマンションのような建物に注目すれば、地震により建物の価値がなくなってしまう可能性を書くこともできるでしょう。

 

また、この問題が2012年に出題されていることから、前年の東日本大震災と結びつけて考えることもできるという出題者の意図があったのかもしれません。地震津波のみならず、原発事故によって自分の土地に住むことができなくなった人もいます。価値があると思い込んでいることが、一瞬にして失われることもあるのです。

 

 もちろん、土地以外に注目しても構いません。お店独自のポイント、株などいろいろなテーマで答えを出すこともできます。

 

 

解答 

 土地に値段がつき売買されている。それは、その土地の価値に変動があったとしても、住むことができない土地になることはないという思い込みがあるからである。(74字)

 宝石は高い値段で取引されているが、本来は単なる鉱物である。誰もがその色を美しいと感じて高い値段で買うだろうという思い込みがあるからこそ成り立つ取引だと言える。(79字)

 大多数の人々が法律の範囲内で生活しており、社会の秩序が保たれている。法律は守るべき価値があるものだという思い込みによって、法律が機能しているのだと考えられる。(79字)