現場思考力ゼミ ―中学入試を使って現場思考力を培う―

現場思考力とは、与えられた条件や自分の持っている常識、知識を組み合わせて、何らかの推論や結論を出す力のことをいいます。中学受験の社会入試問題を使って、現場思考力の養成をはかることを目的に、2014年に双方向性を持ったブログとして運営していました。生徒の答案を添削して公開するという取り組みでした。このブログではその問題と解説の一部を保存しています。

10栄光学園H22 解答解説(中学入試で培う現場思考力)

 緑茶の購入金額が減り、茶飲料の購入金額は増えた理由とは?

 

みなさんは自宅でお茶を飲みますか? おそらく多くの人が飲んでいるでしょう。では、急須で入れたお茶を飲んでいる人は? まだ多いとは思いますが、「わざわざ急須で入れないよ」という若い人も増えてきているでしょう。急須でお茶を入れるというのは日本人としては当たり前のことのように思われてきたのでしょうが、ここ10年ほどで急速にその伝統は薄れてしまっているのかもしれません。

 

 さて、今回の問題。「1世帯あたりの年間の茶類の購入金額の内わけ」というグラフが与えられていて、どうして変化が起こったのかを説明させる問題です。茶飲料の購入金額の割合がたった7年で1.5倍にもなっていて、その分緑茶の購入金額が減っています。まず、このような変化を読み取ることができますが、表に書かれていることだけ書いてもあまり評価される答案にはなりません。「なぜ?」「どうして?」というところまで踏み込んでいかなければならないのです。

 

常識的な問題なので、ノーヒントで考えついてほしい問題ではありますが、分からなくても問題文にヒントが書かれています。

 

 「販売されている製品のすがたや特徴」「販売方法」を考えるとよいのです。

  

 まず、製品のすがたや特徴。みなさんは、茶飲料を買う、もしくは飲むとき、どのような形のものを買いますか? 缶という人もいるでしょうが、ペットボトルと答える人が多いのではないでしょうか。ペットボトルが普及したことで、茶飲料もペットボトルで買ったり飲んだりする人が増えたと考えられます。

 

 では、次に販売方法です。どこで買いますか? 百貨店やスーパーでも購入できますが、購入金額が急激に増えているということは、昔からある百貨店やスーパーはそれほど影響が大きいわけではなさそうですよね。自動販売機で購入する人も多いでしょうが、これも昔からあるものです。ということは?

 

 コンビニエンスストアでしょう。今や首都圏では歩けばすぐにコンビニが見つかるくらいですし、24時間営業の店が多いので、いつでも気軽に購入できます。それに地方の店舗数も増えています。今や日本の生活に根付いたコンビニの影響力は計り知れません。

 

 以上で解答をつくることができますね。紅茶やその他(ウーロン茶など)はそれほど変動が大きいわけではありませんし、字数が限られているのであれば触れなくてよいでしょう。

 

 ちなみにこれだけ茶飲料が増えた理由に、核家族化が進んだことや、一人暮らしの若者が増えたことも関係していると思います。両親と子どもだけという核家族は、祖父母と暮らしている家庭と比べると緑茶を購入して急須でお茶を入れなくなるでしょうし、ましてや一人暮らしの若者ならばお茶を入れる時間がもったいないという人も多いでしょうね。時間がもったいないだけでなく、入れた後のゴミの始末が面倒だと考える人もいるはずです。濡れた茶葉は生ゴミとして処理しなければなりませんが、ペットボトルならば専用の回収ボックスがあちこちにありますから、気軽に捨てられます。 

 

解答

 

茶葉の購入金額が減り、茶飲料の購入金額が増えている理由として、ペットボトルの普及が考えられる。茶葉の場合は入れるための道具が必要で、入れた後は生ゴミとなるため手間や時間がかかる。一方、ペットボトル入りであれば持ち運びもゴミの始末も容易であり、コンビニエンスストアなどでいつでも手軽に買うことができる。(150字)