現場思考力ゼミ ―中学入試を使って現場思考力を培う―

現場思考力とは、与えられた条件や自分の持っている常識、知識を組み合わせて、何らかの推論や結論を出す力のことをいいます。中学受験の社会入試問題を使って、現場思考力の養成をはかることを目的に、2014年に双方向性を持ったブログとして運営していました。生徒の答案を添削して公開するという取り組みでした。このブログではその問題と解説の一部を保存しています。

04渋谷教育学園幕張H21 解答解説(中学入試で現場思考力を培う)

 マレーシア航空の行方不明事件でも話題になった機長と副機長の食事

 

 マレーシア航空370便が行方不明になったことは記憶に新しいと思います。インド洋に墜落した370便について様々な説が流れていますが、はっきりしたことは分かっていません。船や鉄道、自動車や航空機は人々の輸送や生活を劇的に変えましたが、その一方で事故もなくなることはありません。少しでも同じような悲劇を繰り返さないためには徹底した検証と対策が必要です。

 

 マレーシア航空の行方不明事件の報道を目にした時、この渋幕の問題を思い出しました。テレビのニュースでも機長と副操縦士の役割についてコメントされていました。また、20144月には以下のような記事を見つけました。

 

シンガポール紙・聯合早報の報道によれば、国営のマレーシア航空は370便が消息不明となった問題にからみ、安全体制の不備が目立ったとして、最高レベルの警戒態勢で飛行に臨んでいる。京華時報が4日伝えた。マレーシアの捜査当局者に近い人物によると、同国は370便が消息を絶った後、飛行の安全に対する警戒態勢を最高レベルの「コード・タンゴ」まで引き上げた。
あるマレーシア航空の幹部は、同社が航空機の飛行中、操縦室内に常に2人がいる体制とし、うち1人は操縦士であることを義務付けたことを明かした。機長と副操縦士のうち、どちらかがトイレに行く場合には別の乗務員が操縦室内で待機する。操縦室の扉は常に閉じた状態とし、乗務員が食事を運ぶ場合にも見張りをたて、乗客が入り込むことのできない状態を維持する。
また同社のある機長はマレーシア紙ザ・スターに対して、「機長と副操縦士が同じものを食べて同時に食中毒にかかることがないよう、両者の食事の内容は違うものにしている」と明かした。

 

 今回の問題の答えがそのまま書かれていますね。旅客輸送において、乗客の安全は最も重要です。だからこそ安全に航行を行う必要がありますし、食事にも気を配らなければならないのです。

 

 知らなかったとしても、機長と副機長の食事を違うものにしている理由は考えられることではないでしょうか。「安全が最も重要」であり、「機長だけではなくなぜ副機長もいるのか」と考えていけば、万が一に備えてという結論は導き出すことができるでしょう。

 

 このような、知らなかったとしても常識で「なぜ?」を考えることができる問題は良問だと思います。渋谷教育学園幕張はこのような問題が多く出されており、そういう視点で教育が行われていることも東大合格者数を飛躍的に伸ばした理由の一つでしょう。ただ一問一答形式の学習を繰り返すだけでは身につかない能力を問うていますし、「よし、こんな問題も出るのだから覚えてしまおう」というものでもありません。

 

 大人であれば何となく常識で答られるのでしょう。小学生にもそうなってもらいたいのですが、そもそも旅客輸送における重要なことは何か? という視点を持つことで論理的に考えていけば解答につながっていくと思います。そして、そんな思考法をできる子を育てる一助になれればと思っています。

 

解答

 

食中毒などが発生した場合でも、飛行機の操縦ができる人間を確保するため。